本学会理事長就任にあたって
2023年7月に開催されました本学会理事会におきまして,2021年から理事長をお勤めいただいた堀口明彦先生の後任として,日本外科系連合学会の第10代目の理事長に就任いたしました.伝統ある学会の大変名誉な役職であり,皆様のご高配に感謝しつつも,その重責に身が引き締まる思いでございます.
本学会の歴史を振り返りますと,1974年に当時わが国の外科の指導的立場におられた斉藤 淏教授(日本医科大学外科),陣内傳之助教授(近畿大学医学部外科),榊原 亨先生の三人の先生を中心に,外科系15学会の参加を得て設立されました.当初の設立趣意を反映し本会の会則第3条(目的)に「本会は外科系医学の各学会を連合して,医道の昂揚ならびに医学・医術の振興を図り,もって社会の福祉と医療に貢献することを目的とする」と明記されており,医学の進歩に伴って専門分化してきた外科系各専門分野を統合する役割を担うことを目指しています.本学会の英文表記が「Japanese College of Surgeons」と示される所以はそこにあります.
本学会の特徴として,専門医制度を有さない一方で,諸外国のCollege of Surgeonsと同様,高い専門性と識見を有する外科系医師を顕彰するFellow会員(Fellow of the Japanese College of Surgeons, FJCS)の認証制度を有し,すでに227名がその称号を授与されています.また,2023年現在会員数は2,406名であり,多くの外科系医師により運営されています.
本学会は設立の経緯からして,若手外科系医師に対して専門医資格という具体的な目標を提示する組織ではない一方,一定の経験を積んだ外科系の専門家が診療科や職種を超え,また時には社会的な活動までも包含した領域でチーム医療を展開し,さらには若手外科医に専門分野に偏らない幅広い教育を行う,という明確な立ち位置を堅持する必要があろうかと存じます.一方,2024年からの医師の働き方改革が加速される中,外科系関連学会との連携によるタスクシフト,タスクシェアの推進も直近の課題であります.
本学会の国際性については議論の余地がなく,過去にはAmerican College of SurgeonsのPresidentの講演やRoyal Australasian College of SurgeonsのPresidentをはじめとした役員との相互交流が図られており,最近ではPhilippine College of Surgeons,あるいはCollege of Surgeons of Hong Kongとの交流が行われています.今後もAmerican College of Surgeons日本支部,あるいはアジア・オセアニア諸国のCollege of Surgeonsと連携して活動する必要があると考えます.
今後も学術集会,機関誌などを更に充実させ,本学会の継続的な発展を図り,社会に貢献できるよう努力していく所存です.
会員の皆様におかれましては,今後も引き続きご協力ご支援を賜りますようお願い申し上げ,理事長就任のご挨拶とさせていただきます.
日本医科大学消化器外科 吉田 寛